勝浦の魚セリ

 

朝、６時４５分、市場到着。

この日、南紀勝浦に雪が舞った。
朝、ロビーへ降りると、ホテルのロビーマンが「外はものすごく寒いですよ」と言うた。
が、出てみると、なんとなく気の抜けた寒さであった。南紀ではこの寒さが、もの凄く寒いということらしい。用意のマフラーを出そうかひっこめようか思案し、結局はマフラー巻いて外へ出た。

ホテルは市場のすぐ近く。少し歩けば魚市場だが、気がせいて仲間らと車へ乗り込む。

３分とかからず魚市場へ到着。すでに広い荷揚場はマグロマグロマグロでいっぱい。

ザッと見わたしたところ、７〜８割がトンボ（ビンチョウマグロ）である。残りがメバチとキビレ。ごく少数のカジキ。全く例外的にクロマグロ。クロマグロは２本だけ。

ビックリしたのはカジキだ。
吻（フン・槍状の上あご）は切り取られ、尾はギリギリまでカットされ、背びれは折りたたまれ、見る目まことに情けなく、汚い古布団を丸めたみたい。
カジキの尊厳を傷つけることおびただしい。左がそれである。
河岸のカジキは、釣り師は見ちゃダメ！百年の恋がチラリ見で冷める。古フトンが、まさかあの雄雄しいカジキだなんて思っても見なかったですよ。
「これ、カジキですよ」といわれ、天地がひっくり返るくらいビックリした。

カツオとシイラが隅の方に押し込められていた。この他に珍しいものはないかと探したが、見渡す限りマグロマグロの討ち死にである。ずらぁ〜とマグロが寝てござった。不思議とヨコワは見かけなかった。ヨコワは沿岸近くの魚だからということらしかったが、腑に落ちないことだ。けっこう沖合いで、わたし釣ったことがある。

今回企画の中心アカマンボウ氏の関心は、当然ながらマンダイであった。
マンダイ（下記に再掲・写真も）、これは別名をアカマンボウといわれる珍魚。大きな魚だ。マンボウと同様クラゲが常食。体型はマンボウ的。しかし、色彩はまったく別物で、ケタタマシク美しい。

さて、マグロ。
すべてが氷蔵マグロである。冷凍物は１本もない。

キビレ・メバチの大物は、セリにかける前に尾を切っておく。品質を見定めやすくするためである。包丁じゃない。ノコギリで切る。小物やトンボはただ転がされたまま。

漁体に傷があるものがある。サメに食われた傷だ。半分ほど食いちぎられたトンボもセリを受けるべく並び寝ていた。こんな傷物トンボまでも並べなければならんとは。きっとその船は厳しい漁であったのだろう。もし値が付いても１尾１００円以上は無理じゃなかろうか。まっとうなトンボでもキロ３００円程度らしかったから。

セリ（競り）は入札制だった。
特製入札台（写真参照）を、入札するマグロの近くまで、係りの人がワッセワッセ担いでくる。提出された入札フダをセリ人（？）が入札台に並べ、比較結果（落札人）を台作り付けのマイクで知らせる。一発勝負。例の威勢の良い掛け声は一切ない。静かなものだ。
あれ？どうなっているのかな、と思うと、もう入札は済んでいて、また係りの人が入札台を担いで次の競り対象マグロの前まで運んでゆく。で、入札フダの受け取り・並べ替え・落札のことがあって、また入札台は次の次のマグロの前まで担がれるといった按配である。大物は１本づつ。小物は適当にまとめて入札されているらしかった。

諸事万端（有）大井水産のお世話になった。

マグロ解体などの仕事場を親しく参観させていただいた。

試食会までも用意してもらって感謝感激の至り。

ビンチョウ・メバチ・インド（ミナミマグロ）・キハダ・メカジキ・マンダイの各特上部位を試食した。幸せの突当り。これから先何年生きていようと、これほどの機会はもう無いだろう。マグロに勝る太っ腹社長のおかげである。わたし、今後、大いにこの会社のことをPRするつもり。

少し解説しておこう。

インド（ミナミマグロ）は、クロマグロと甲乙つけがたい魚である。寿司屋でこの大トロ一貫（にぎり二つ）食ったら３〜４千円は取られておかしくない。

メカジキはカジキで最も美味いものである。クロマグロの上をゆく評価を得ることもしばしばだ。

マンダイ。
これはほとんど食った人は居ないだろう。別名をアカマンボという。
この魚をサシミに造ったのである。
ごくごく稀に、マグロ延縄にかかることがあるが、一般市場に出ることは先ずない魚。なにせ、勝浦のマンダイはアカマンボ氏がアッという間に仕入れてしまう。アカマンボ氏？そう、アカマンボに惚れた湯浅の魚屋さん。写真で、黒装束のお兄ちゃん。魚の達人です。わたし、このアカマンボ氏の友達の端くれ。

マンダイのサシミ食ってみたいですって？　波平はんに頼みなはれ、そうすりゃ、わたしからアカマンボ氏へその旨の急報が飛んで、アカマンボウ氏大いにハッスルし、ホイデあなたと喜びを共にすることになる。値段？　さぁナンボほどやろか？