友 艇
今、４艇が、九州南西海域トカラでマグロを狙ってトローリング中だ。
４月２７・２８日、４艇は、合い前後して播磨灘の高砂を発し、屋久島からトカラ列島を目指したが、それ以来天候は安定し凪が続いている。
４艇中３艇は、瀬戸内海を西行し豊後水道から日向灘を南下した。
残る１艇は紀伊水道を太平洋へ抜け、四国南岸を通るコースを選んだ。
全艇いったん日南海岸・
豊後水道経由コースは、実は、昨年６月に愛艇「はまちどり」が辿ったコースを模したのである。この航行途上、同行したヨシ坊から友艇オーナーらに発した携帯メールが、絶妙の味わいあるルポだったもので、これが今回の４艇の屋久島行きを誘発した。
４艇は、わたしの艇とは大きさも性能も月とスッポン。ベンツとゲンチャリほどの差がある豪華艇だ。
わたしは昨年１０ノットそこそこで、濃霧のなかを手探りし恐る恐る日向灘を南下したが、彼らは、超高性能レーダーを使い２５ノット強の超スピードで一気に南下。最高３０数ノット出る超豪華艇が混じっている。不審船も顔負けだ。
内１艇に、マリーナ・ベテラン営業社員・ヨシ坊がルポライター兼ナビゲーターとして添乗している。ベタ凪ぎの海は退屈でかなわんとメールをよこす。操船しつつ携帯メールをいじくっているらしい。ドコモメールは高性能無線機でもある。沿岸遥か遠く離れても、陸が遠望できる間は、まず通信が途絶えることはない。
各艇は自動操船装置を装備している。目的地を入力しておけば、あとは機械が勝手にＧＰＳを読みとって操船する。人間は、操縦席に、ただ眠らずに座っているだけでよろしい。ただ、じっと座っていると人間は眠くなる。眠気覚ましのメール発信は、安全対策上むしろ勧められてよろしい。メールを受けるわたしの方も、彼らの動向がわかって、それなりに楽しめる。
短文ながら、ヨシ坊氏は機知に富んだメールをよこす。
その後、彼ら４艇は、今朝未明、屋久島を発し、トカラ列島を目指したようである。
午前７時７分発信で、「現在トカラ海峡横断中」とのメールが届いた。
発信文に、
「勝手モンの集まりみたいな波ですね！」と書き添えてある。
“勝手モンの集まりみたいな波”とはどういうことか？
周辺海域は凪いでいても、トカラはやはり荒れていたのであろうか？
この時刻、天気図でみるかぎり、トカラ海峡は最も凪いだ状態であったはずだ。
昼前には、彼らは、トカラへ着いているはずである。
以後、周辺をトローリングしているに違いない。
昨日はたびたび届いたヨシ坊メールが、今日はなぜか届かない。
と、いうことは、ヨシ坊は退屈でないということ。
と、いうことは、忙しくてメール打ちを忘れるほどだということ、
…いうことは、ハメ食い状態でマグロがバンバン釣れているということ？
心臓に悪い妄想が次々沸き出でて、わたし、居ても立ってもおられない気分。
断固、わたしも一緒に行きたかった。
わたしの艇では、彼ら豪艇との性能差が大きする。
だけど、ヤッパ、くっ付いて行くべきであった。
きっと艇が沈むほどマグロが釣れたであろうに…。あぁ、居ても立ってもおられない。