天は見捨てた　　

 

釣り絶好期の１０月５日・６日・７日・８日は４連休であった。

わたしは体育館に雇われておるが、土日祝に仕事が偏り、ために時折こういう変則休暇が与えられる。

 

天は、私をお見捨てではなかった。４日間とも絶好の釣り日和。

５日・６日は当然がんばって沖へ出た。

が、７日は、さすが疲れが出て休養。

８日も、やはり休養のつもりが、脳中、ハマチ・太刀魚がチラチラし、どうにもガマンならず、また沖へ出た。

 

一応、沖へは出たのである。

高砂の天川河口東岸は、関電の高砂火力発電所だ。その沖、約１マイルまでは出た。

と、エンジンが不快な音を立て、エンジンルームから煙が吹き出た。

急停止。

エンジンルームを覗くもさっぱりわからん。

で、そろそろ、マリーナへ引き返した。

 

マリーナの技術に見せて、もう良かろうと言うので、出た。

と、関電所沖約１マイルまで来ると、また不快音と煙。

で、そろそろ、引き返した。

 

マリーナの技術に再度見せて、もうもう良かろうと言うので、またまた出た。

と、関電所沖約１マイルで、またまた不快音と煙である。

で、そろそろ、引き返した。

意気消沈。どうにもならん。天は、わたしを見捨てた。

 

原因は、わたしが、エンジンオイルの極端に少なくなっていることに気付くのが遅れたことらしい。

この日は、実は、船検後６日目である。わたしは、船検受験業務をマリーナに委託しており、まさか、エンジンオイルが切れたまま船検が合格し得たとは思ってもみなかった。

この点たずねると、船検では、検査官がエンジンのオイル量などをみることはなく。ために、受験用意にオイル補充などすることはないということであった。

反論すべくもない。わたしは、だいぶ前から、オイル点検を怠っていた。

 

それにしても、油圧計は突然下がったように思われる。不快音がして煙が出た後も、水温計は異常を示さなかったし、直前まで、エンジンは快調であった。だのに。なぜ、急にオイルがすっぽ抜けたのだろう。

技術の者等は、徐々にオイルは減っていて、ほとんどオイル無しで走っておったに違いないという。これはエンジンが焼きついてしまった症状だという。

とにもかくにもエンジンがいかれておる。

泣き泣き、オーバーホールの発注をかけた。

 

ポケットに入れた携帯電話が、着信音を発したような気がして確かめると、

「お元気ですね。太刀魚に噛み付かれないようにね。あしたからシンドイだの体調が悪いだの言わないでおくんなせえよ」

と、かみさんからのメール。

 

前夜、ぼやぁ〜とではあったが、わたしは、太刀魚が釣れる時期だとか、明日も凪ぎだろうかとか、みえみえにつぶやいて、あるいは休養を取りやめて釣りに出るかもわからんぞ、と、かもしておったのだ。

で、今朝、かみさんが、未だ寝ておるところを、こそっと起き出し、マリーナへ走ったのであった。

このエンジントラブルは、ゼニが掛かりそうである。

かみさんに、どう報告し認可を得たものか。

突然のことゆえ、なんら、かもす余裕なき事態発生である。

天は、徹底的に、オラを見捨てた！