合わせ柿　　

 

エンジンは、発注してから納品までに、４カ月かかるそうだ。

と、言うことは、来年３月末まで「はまちどり」艇は動けないということ。

僕かぁ〜、４カ月間、どうするの？

三年寝太郎やってみようかしらん。

きれいな写真がたくさん載っているジギングの本を買って来たが、ページを開く気がしない。ページを開くと、いたずらに寂しさ・はかなさ・海恋しさが募るだけだ。

なぜこうも、神は、オイラを試したまうのか？

エル・エル、サバクタニー！

 

ご近所の、昔、２０万トンタンカーの船長やってたお方が、奥さん同伴で、フラリとやってきた。

「どう？『はまちどり』の調子は？」とおじいさん船長。

「また故障です。嫌でしょう」とかみさん。

「もう新しいのに乗換えなさい」と昔船長。

「エンジンは新しいのにすることにしました」とわたし。

「船ごと新しいのにしたらいいじゃない」と船長。

「わたしもそう言うのに、ねぇ、そうでしょう」とかみさん。

バカな！

話だけなら何とでも言えるわさ！

銀行にお金はたくさんあると言ったって、皆、他人様のゼニじゃないか。

「なんぼ程要るの？あっそう、３千万でいいの？だったら買ったらいいじゃない」と船長。

「○☆さん！無茶苦茶言わんといて、そんなお金どこにあるの？わたしとこは○☆さんとは違うのやから」とかみさん。

 

世の中に、お金持ちは、わんさと居て、この○☆さんもその一人。話の途中までは付いてゆくが、話が具体化し、枝葉に入るともういけません。ぜんぜん付いてゆけない。だって、話の後ろにつくゼロの文字が、わが家とは二つ（二桁）は違う。

ゼロ二桁をまたいで、氏はやって来て、「…だったら、買ったらいいじゃない」とすら〜と言う。おもしろいねぇ〜。こういう話ってワッシャ大好き。

 

氏と、話が、合いにくいかというと、これが案外そうでもない。結構楽しく、時には一緒に食事をしたりする。いくら金持ちであっても、ゼニを積み上げ、札束をステーキにして食うわけじゃない。ヤッパ、ダイコンや菜っ葉を食っておる。

 

先日刷り上ったばかりの「波平波枕」を進呈させていただいた。

おまけ・付録は、姪から届いた“合わせ柿”。

これは、元々は渋柿だが、焼酎を加えて密封し、ゆっくり塾生させたシットリ甘の柿である。

この合わせ柿のうまさを、書こうと思うのだが、なかなか適当な言葉が出てこない。

“深みのある甘さ”、どうも言い足りない感じ。

“柔く懐かしい味”まだ足りん。

“やさしい田舎の甘さ”

だんだんといいわけ臭くなって面白くない。

“金持ちでも食いたくなる代物”

これなら、ある種、真実を突いておる。

 

氏は、大喜びで、五つばかり、持ち帰られた。

もう少し残っておる。本当に喜ばれるお人に差し上げたいが、お届けはできない。

なにせ、今や、完全ぽっちゃりの完々熟だから、やさしくフワァ〜と持たなければ、すぐに実が崩れる。

ホォ〜ラ、うまい！

 

柿食って　潮気を払う　エセ漁師　　波平