墓石売り　　

愛艇が故障していて沖へ出られない。

で、最近は、天候のことがトント気にならなくなった。今日がどの潮に当たるのかも判然とせぬ。

が、そのわたしの哀しい変化に気付かぬお方もあって、

「波平さん、明日、雨の方は大丈夫でしょうか？」

などと平気な顔でお尋ねになる。

期待に反するのは辛いが、天気図なんか、最近はぜんぜん見ないのであるから、お返事しようがなくて、

「さぁ、どうでしょうね、わたしも、さっぱりわからん」

と答えるしかない。

自分で、沖へ出ることが出来なくはなったが、釣りが嫌いになったわけじゃない。

仲間らの釣り状況が、気になってしかたがない。

で、パソコン・キーボードを叩きまくって、調べまくる。

こうすることが、幾分の慰めになるのは事実だが、反作用もあり、あらたなストレスを抱え込むようにも思われる。

沖へ出られないのであるから、この際、陸で出来ることをやっておこうと思いついたのが始まりで、仕掛けの整備がその一つ。

言ってしまえば簡単だが、

これが、新たな仕掛けを購入・導入することに、リンクせざるを得ないとなると、ことはそう簡単ではない。

横曳きカツオ飛行機（トローリング用具）を、左右分欲しい。計２万円。

ジギング竿の強調子のものが欲しい。４万円。これに合うリール８万円。

ジギングを各種揃えたい。最低約２万円。

小型発電機が欲しい。○×万円。サワラ用弓角がだいぶ傷んでおる。新たな物に取り替えたい。艇防舷材・パラシュウトアンカー・高性能魚探・ETC…、

誤解があるといけないから、言っておきますが、これらの、夢々と、現在勇ましく戦っておるということであって、事実は、何一つ撃破・実現できそうな物はござらん。

なにせ、艇の、修繕費が巨額すぎる。

手持ち用具の内で、どれか金目のものを質屋へ出さなあかんが、さて、どれを手放したらよかろうか。

バカな！

そんなことが出来る頃は、ワッシャ、もう墓石に化けておる。