韓国海苔

 

友人に韓国通の男がいて、定年退職後、韓国語を勉強し、たびたび韓国へ、何するつもりかは知らぬが出掛けておる。

かの国へ出かけたら、なんぞ、おもろいことがあるのではと、カマかけて問うてみるが、まじめマジメ一方な返事しか返ってこん。

つい先日、彼に出会った際、彼が、韓国の土産だといって、キーホールダーとか、何やかやよこしたが、わたしがつまらなそうな顔をしていたのか、「あっそうだ、これ、もし、食うのやったらあげよう」と、韓国ノリを一束くれた。

 

わが国の海苔とは違って、キツイ味が付いており、一枚一枚が、ビシッと詰まってなくて、スケスケの薄い海苔であった。手で触ると、脂が手に付き、妙なネトネト感がある。日本のアッサリ海苔とはだいぶ趣が違う。

が、これが、食ってみるとなかなか美味い。すっかり、韓国ファンになってしまった。

 

元来が、わたしは、唐辛子好きであって、キムチが大好物である。

思えば、美しいと感ずる際の色調なども、案外韓国的色彩であることが多いようにも思われる。

 

彼に、今度、韓国へ行く時には、俺を連れて行って、なんぞエエ思いをさせてくれんかと、注文を付けた。

きっと、彼は、かの地で、たびたびエエ思いをしているのであろうという、下衆な思いがあっての依頼だったが、彼はぜんぜん我が本意を解さないようであって、急きょ願いの趣向を変え、

「いやなに、美味い物を思いっきり食ってみたいたわけだ」と、トーンを下げた。

 

そのうち、彼から、まじめな、韓国同行の誘いがあるかもしれない。

でも、あの、スケスケの、味付け海苔ばかり食わされるのも考えものだ。

で、目下、前言訂正の機会を狙っておる。

 

しかし、

たまたま、今晩、またもや、その韓国海苔をバリバリ食って、焼酎のお湯割りを重ねているわけだけど、これで、けっこう楽しいし、まんざらでもないわけである。

まぁ、ほったらかしておいても、なるように、なるのではあるまいか。