ゆっくり　　

愛艇用の特注エンジンが納品されるのは、来年は、２月下旬から３月上旬にかけてのことだ。

時間は有り余るほどあるから、このところ、少しずつ艇の清掃や釣具の手入れを行っている。

ゆったり気分の楽しみといったところだ。

しかし、これが難儀なことながら、

わたしの場合、ゆったり気分などと言う物は、しょせん、貫徹されたことなんかありはしない。いつの間にか、セコセコやって、なにもかもぶち壊すが落ちである。

今日も、艇ミガキをゆったりやって、艇の上で弁当でも広げようと思い、２５０円の寿司とオヤツを買って、みかけユッタリ出かけたのではあったが…、

艇を磨くという行為は、やってみると、ゆったり気分とは縁のない動きだった。

セッセ、セッセとひたすら艇体を磨きコスル動作は、どうみてもゆったり的な気分じゃない。やりだすと、シャカムキニなって、ゼーゼーいいながらこすった。

悟って曰く、コスリ磨きは、切羽詰った短気者にこそ似つかわしい。

弁当を食う時間すら惜しく思われて、食いつつコスリ作業をしたから、いつ、弁当食ったかわからなかったし、酒だって、いつの間に飲み干してしまったのか分からなかった。

あれ！　酒はもう全部飲んでしまったのかな？と、思って、手持ち袋をかき回したが、空っぽだった。

コスリ用具がへたってしまって、仕方なしにコスリを止めたけれど、こすった箇所に、水をぶっ掛けて、仕上がりを確かめ見たら、なぁ〜んだ、あまりきれいになってないじゃないか。酔っ払ってしまって、こすり箇所が一定しなくなったのが、あるいは原因のひとつかもしれない。

バカバカしいたらありゃしない。

トトロ艇が、艇体の塗装作業にかかっていた。

幾度も幾度も塗料を塗り重ね、その後、磨きに磨くと、ピカ〜と光る艇に仕上がるらしい。

作業中の業者に、「いつ光らせるのや？」と問うたら、

「もう一度塗り重ねてから磨きます。光るデェ〜」とのことだった。

できれば、その頃には、我が艇もエンジン据えつけを終えたいが、間に合いそうに無い。

きっと、ピッカピカに光るトトロ艇を、指くわえて眺めながら、わたしは、いまだ、エンジン抜きの、愛艇を、またまた、こすっているのであろうなと思うとなさけなかった。

こすったって、あちこち傷つけた歴戦の跡は、それなりに深くエグレており、消えはしない。この傷はあの時。あの傷はいついつの時、と、これって、不思議と、全部覚えている。

今日は、

この傷跡全てを、一巡し、

深く酔って、なんとなく納得し、

その後、昼寝もどきの時を過ごし、⇒酔い覚めテ後、帰宅した。

なぁ〜んだ、ゆっくりしてきたじゃないか。

今は、そう思っている。