♪時の流れに身をまかせ♪

 

「しかし考えようによれば、このお蔭（この事故のおかげ）で

　　　新品のエンジンがつくようになったのですから、

　　　今後の船人生の前途はバラ色ではないですか」

 

ある先輩から、上のようなお言葉をいただいた。

まことにありがたい励ましの言葉だ。

 

が、わたしは、

「うんにゃ、今後がバラ色なんじゃない。たった今がすでにバラ色だ」と変コツな便りを返した。

魚釣りの楽しさは、釣り行き前夜から、といったような屁理屈を言ったが、

なんとなく言い足らない思いがフワフワ脳裏をよぎる。

 

思うに、わたしは、あまりイライラしていない。

イライラし続けて、いざ、修理が終わったら途端にイライラが吹っ飛ぶのだろうかと思うと、自分の気持ちの安っぽい動きに腹が立ったわけだ。

バカバカしいから、もうイライラはやめようと思った。

これから先のことや、すでに終わったことを、意識の中心に据えて、それで、今が充実するならそれでよろしい。

が、しんどいなら、やめたがよろしい。

どうせ、今のことではないのだから。

で、今は今のことを、船の掃除でもしていようと思ったわけだ。

 

以前は、こんなに簡単に、イライラを片付けるなんてできなかった。

今、これを片付けなければ、後でとんでもないことになるかも、と、思うと、じっとしておれず、イライラして、コレッと思うことに取り組まねば気がおさまらなかった。さして良い結果を得たわけでもないのに…。否、逆バッカだったのに。

 

なぜ、今、こうも簡単に、イライラを捨てることができるのだろうか？

よくわからない。

根気が無くなったせいかもしれないし、破れかぶれのなれの果てかもしれない。

ただ、イライラを捨てた途端に、

あれこれ、今やらねばならん他のことに気が付いた。そちらの方へ気が取られるから、イライラ事へ関わってばかりおれなくなったということもある。

 

来春２月、今ひとつの趣味、尺八の演奏会を控えている。いまだ稽古が不十分のままだ。やれ、稽古にかかろうかと思った矢先に、縁戚の者が亡くなったとの知らせが入った。遠隔地である。

やがて修理がかなうであろう艇の再生後の晴れ姿を薄ボンヤリと夢見つつ…、

尺八も吹き、葬儀へも出席するのである。

補記・まだ、なにか言いたりない。
　　　わかった！
　　　残念ながら、又、歳のせいだ。
　　　単純極まることだった。人生同じ残り時間をすごすのに、イライラしてばかりは変だ。
　　　と、思った、ということ。
　　　酒ビンは、もう七分ほどは呑んでしまった…、イヤそうじゃない１
　　　まだ３分も、おいしい酒があった。