存在感　　

風邪は少しずつ治りつつある。

だって、身体各所の存在感が、しだいに薄れつつあるから。

頭は痛い、手足はかったるい、腹具合は悪い、ずっと横になっているから腰はせつなくダル痛いは、で、こんなにたくさんの部品から、俺は組みあがっていたのかとあきれておったから。

普段、鏡でもその気で見ぬ限り、頭がどこについているかなんぞ、見たことも考えたこともないものを。

昨夜は薬をドッサリ呑んで、７時前に寝てしまった。

で、今朝は、もう起きだしている。

すっかり治ったわけではなく、７分治ったといったところ。

あとの３分は、以後３日間の猶予を与えるから、その間に治るよう言い聞かせている。

変な話だけれど、未だ、わたしは、自分と自分を組み上げている身体各所は別物のような気がしてならん。自社の営業部門に対し、以後３日間の内に、ノルマを達成せよと、わたしは社長号令を発したのである。

３日後の７日に新年会がある。以後、立て続けに３つある。そうこうする間に、２月２２日は邦楽演奏会があって、これに出演が決まっている。

まだしばらく、艇は、風邪引き（？）のままであるから、与えられた曲の練習に励んでみよう。

かみさんは日本画をやっていて、本人はいっぱし画家のつもりだ。すでに新春画題に取り組んでいて、今日はお師匠さんへご挨拶に行くとか言っている。

ホーム入居中の母は、体力・気力は衰えたが、存在感を、半ボケ状態アレンジで、演出するのが極めて上手。ついつい騙されてアホらしくなる。

わたしは、毎日毎日、母の元へ通っている。

ホームからの要請に応えてのことだ。

わたしか、かみさんが常に訪れていないと、まわりの方々に、大仰に嘆きまくる。迷惑がかかりすぎる。

わたしは、毎朝毎朝母を見舞い、彼女の嘆きを聞き、職場へ向かう。

わたしは、今、風邪を引き、そして治りつつある。

治ったら治ったで、またシンドイことが待っていると思うと、中途半端なまま風邪の中へ引っ込んでいようか、と思ったりする。

昨日、わたしは、ホームを訪ねなかった。風邪を持ち込むことを危ぶんだのである。