未完成症候群　　

立ち居の都度、天井や空がグルグル回るのは、面白いが、決して好ましいことではない。

いっときの風邪症状によるものなら、いずれ快癒もあろうが、自慢じゃないが、わたしは若い頃からの歴史ある高血圧者。そのせいで空が舞い舞いするようなら、これは一大事である。

で、まず、酒を暫時中止する。すなわち禁酒する。

このところ、あるいはわたし、アル中毒者になりかけかもと、内心心配だった。

これはどうやら大丈夫。禁酒しても、手も、足もふるえなかった。

２日間禁酒したら、３日目の今日は、もうことさら酒のことを意識しなくなった。で、焼酎の瓶を、邪魔っけだから取り片付けようとしたら、瓶の底に少し、焼酎が残っていた。捨てるのも大人気ない。別に呑みたいとも思わなかったが、呑んでしまった。禁酒の誓いを破ったということではない。わたしは、暫時酒を止めようとは思ったが、禁酒の誓いをしたわけではない。それに、呑みたいと思って呑んだわけでもない。

瓶は、他にもいくつもある。日本酒・焼酎・泡盛・ワイン・ビール…。

ビールに、開栓した呑みかけがあるわけないが、あとはみな栓を開けた呑みかけばかり。難儀だ。いずれ片付けなければならん。あぁ嫌だ。

まだ、体調は、戻りきらぬ中途半端な状態である。

オデコに熱が貼り付いているような心地がする。

風邪か、高血圧の悪化によるものか、未だに判然としない。

したがって、酒は呑みたくなく、自然、暫時禁酒を続行することになるが、

⇒誓いじゃないから、時がきたら呑む。

⇒再度言うが意思が弱くて禁酒の誓いを破るということではない。

⇒わたしの意思が弱いのは昔から自他共に許しておる。

⇒今更禁酒云々をいいたてるまでもない。

⇒酒なんてものは、シンドイ思いしてまで呑むべきものじゃない。

⇒やはり、呑みたいから呑むということでありたい。

⇒なんと、わたしは、素直なおっさんであることか。

体調だが、

昼間はどうってことなかったのに、どうもスカッ！とせん。

艇が、修理完成したというのでマリーナへ出かけたが、まだメカニックたちが、寄ってたかってエンジンに取り付き、ゴソゴソやっておった。

すべて完成するまでにはあと数日はかかりそうだ。

「いつになったら使えますか？」と問うに、

「さぁ〜」とだけで、顔もあげずに、メカたちは、エンジン取り付けの解説書とエンジンの、見比べをやっておる。

エンジンの取り付け方向に解説書の図面をねじり合わせて、配線箇所の発見に努めておる。忙しそうだ。

この調子ならいずれ近いうちにはキット動くであろうと思われる。

なにせ、エンジンは、すでに艇内のエンジンルームに座っておる。

横からヤンヤ言って足踏みしたところで、どうにかなるものでもない。

ともかく今日はここまで現認できたことで良しとしよう。

５００年（５か月）間も待ったのである。

あぁ〜遥遥と来つるものかな、幾年の春秋。

高き桟橋に立ちて、足下に浮かぶ艇を見るや久し。

いまだし動かざるも可なるかな。

待てば海路に日和あり。

だがしかし、

思うに、わたしの体調がよくないのは

これが原因かもしれない、風邪によるでもなく、高血圧症の悪化によるでもなく、やはり艇の“修理未完成症候群”のなせるところ。いわばストレス性ヨシ○病とでも名付けるべき病であるらしい。

補注・わたしが、稿中再々、ヨシ○氏を褒めるものだから、

　　　ヨシ○氏、恥ずかしがって、

　　　「あんなんお客さんに読まれたら、舟が売れんようになる…」と言う。

　　　ことわっておくが、

彼・ヨシ○氏は、実は、当代・超一流のマリン営業マンである。

　　　“ワラの杖”とは、⇒如意棒（孫悟空の）の意。

　　　ヨイショ！