桜下沈想　　

 

先日、ＦＭミッキーのトーク番組収録の際、ディレクター氏から釣りの餌のことをたずねられて、

「最近は疑似餌釣りですなぁ〜。漁師は昔からが疑似餌釣りやっとったけれど、これからは素人も、その方向へ行くのじゃないかな」と、お話しした。

収録前の雑談中のこととて気軽に口を滑らせたが、後で思うと、これって意外と核心を突いておる。

 

釣具屋の商品陳列は、今や、疑似餌関係の展示が中心だ。

通常使う疑似餌には、ジグと、サビキの、２系統がある。大型店はこの両方を店内せましと展示している。

客たちは、展示棚の間を泳ぎながら、疑似餌のご馳走にヨダレヨダレ。

魚たちの好みをおもんばかって品定めするが、その実は、魚じゃない、おのれ好みで選んでおる。

と、言ってもこの選定、あながち当を得ていないわけではない。

見かけは人間だが、脳内はすっかり魚。そういうおっさんばかりである。おのれの好物は、概ね魚たちにも好物。そう信じて疑いもしない。

 

魚になりきること、これって楽しいじゃないか。

カレイになったり、タイになったり、スズキや、メバルになったり…。まるで水族館だね。いや、魚屋の店先かな？

 

ところで、今年、２月・３月は、

小豆島周辺で、タイのサビキ釣りがずいぶん流行ったようである。

わたしは、艇の故障で出られず、陸で地団太踏んで悔しがったが、だぁ〜れも、タイを届けてくれんかった。

あぁ〜、タイが食い鯛。

 

せめて、連中が使った疑似餌だけでも手に入れたいと、艇友に泣いてすがりつき、

「端切れでエエから欲しい」と言ったが、未だ使い捨てのゴミ端すら手に入らない。

もう慌てたって、タイの盛期は過ぎた。歴史は来り、そして去った。

過ぎた時間はもう追っかけようがない。

 

あの、ググッ！の感触を忘れて、すでに久しい。

サビキの姿も忘れた。

タイの盛期も過ぎた。

桜は咲き、そしてはや散りつつある。

なのに、わたしは、未だ陸に居て、ペラの完成を待っておる。

 

ペラ発注先業者から届いたメール。

「１週間から１０日で出きるものではないことをご理解願います」

わたしの思い過ごしかわからんが、窓口になっていただいているお方は、なんとなくおもしろそうな感じのお方。

一生懸命、わたしの要望に沿う努力をしていてくださるような、そんな感じがあって、ぼかぁとっても嬉しい。

桜は、はや、散りつつあるが、ぼかぁ〜、だから、静かに待っておる。