花

 

愛犬「花」は、今年、間もなく１３歳になる。

ボルゾイという犬種で、その昔、ロシアでオオカミ狩に使われた猟犬である。

一見、犬とは思えぬ体格で、子供等が乗って走れるくらいの超大型犬だ。

わが家の箱入り娘であって、８畳の間の応接セットが彼女の居場所。わたしは、この部屋の片隅を書斎代わりに借りている。

 

大型犬の寿命は小型犬に比して短く、概ね７〜８年。花は、既に１２歳。驚くべき長寿というわけだ。

今月に入ってから急に年老いて、ヨボヨボになった。

ここ数週間、食欲が落ちる一方であったが、数日前からは、ほとんど何も食べなくなった。

見る見る痩せて、ただでさえ細身の身体が麦わらみたいになった。立ち居がままならぬようになった。

 

気管に腫瘍があるようだ。腹水が溜まり、肺や心臓を圧迫していると、獣医の診たてである。
いろいろと治療にあたってはいるが、急激な衰弱は、止めようがない。昨晩、わたしは、彼女に付き添って一緒に休んだ。

いつなんどき、どうにかなりそうな切迫した状況下が続き、かみさんが疲労でダウンしてしまった。

わたしだって、寝不足もあって疲労がたまりつつある。花の苦しさは押して知るべし。

アァ〜心配だ。

世の中は連休で、海も凪ぎだが、今日は、とてもじゃないが花の側を離れ難い。午後から、しばらく出勤せねばならんが、仕事なんかしておれない気持ち。どうしようか。

花は、少し身動きすると、チアノーゼを起こし、舌が真っ青になる。

気が気でない。
アァ〜心配だ。