寝直す　　

わが家は、未だリホーム工事が続いており、キャンプ生活のような日々を送っている。一応屋根の下にはいるわけだが、炊事場・風呂・トイレ等が壊された状態とあっては、食事もままならぬわけであって、使い捨て紙製食器で、出来合い物を買ってきて、かみさんと二人モソモソ食っている。

トイレが不便で困る。お隣をお借りしたりもするが、概ね近くのスーパー等へでかける。ついでにいろいろ余計な物を買ってしまうことにもなり、おもしろくない。

楽しい事もあって、近くに「グリーッピア三木」があるが、ここの「森の湯」（温泉）に通う楽しみができた。昨日も出かけたが、中学生の修学旅行の一行と鉢合わせになり往生した。わたしは難儀に思ったが、かみさんは大喜びである。わたしは湯船ではしゃぎまわる中学生等に辟易し、早々にあがったが、かみさんがいつまでたっても女湯から出てこない。なかで湯あたりでもして、ひっくりかえっておりゃせせんかと按じていると、眼を輝かせて出てきた。

「若いってすばらしい」という。

「女子中学生らのハダカがすばらしかった。描きたかった」という。

曲がりなりにも、かみさんは、絵描きだ。プロモデルの写生会などでは味わえぬ感動があったらしい。

工事中のわが家の風呂場が出来上がりつつある。まだ、新建材特有の薬品臭が強く、各所接着部位が固まらぬし、給湯器設置が遅れていて、使用にはたえないが、ここに以前には付けてなかった大きなカガミが付けられた。

森の湯から帰って、

「このカガミに、醜い老人のカラダ映すのって嫌ね」という。

すぐ相槌打つのも、かわいそうに思われて口ごもっていると、

「しゃぁないね、年取ったもの」という。

わが家は、バリヤフリー仕様にやりかえたのであった。

いまひとつ、困ることがある。

家財道具一切を、梱包し、他所へ移したり、工事区画を避けて隅に積み上げたりしている。手元から「本」が一切なくなった。辞書すらも無い。何か気になることができても見たい本が手元に無い。で、あきらめる。その都度、わたしは、バカになるような心地がする。パソコン検索で間に合わせようとするが、ある程度は可能だが、なかなか見たいサイトを探し当てることが出来ない。イライラがつのり気に入らない。

工事が滞るのは、雨のせいである。五月がこんなに雨月だったとは思わなかった。

昨日も雨。今日は午後からは晴れるようだが、午後からでは大工さんらは仕事にならんのではないか。

真夜中に、何かが転げ落ちる大きな音がして、目が覚めたのである。

気になって、あちこち確かめるが、何が転げ落ちたのかさっぱりわからん。

目が覚めてしまって、で、これを書いている。

今、朝、３時すぎ。また、寝直そうかと思う。