ヨシ○あらわる　隠岐海戦１０

雨・雨・雨。

雨にぬれそぼつ艇。

静かに飲む酒もまた格別のものがある。

この雨も肴。コールマンランタンの光も肴。ランタンは息をする。シューと息の音がする。、ランタンの息も肴。

誰かが居て、話しながら飲む酒は、あれは話を飲むのであって、酒を飲むのとは別のことだったかも知れない。牧水じゃないが、酒は、一人で静かに飲むべし。

と、この静けさは３０分とは続かなかった。

ヨシ○から、同船許可を求める携帯電話が攻めてきた。

「わたし、明後日午後、新門司マリーナへ行く仕事があります。波平さんさえよければ、これからそちら（恵曇港）へ夜行特急で行って、新門司までの間、お力になれますけど、どうですか？」と。

彼は、新門司マリーナから、ボートを播磨マリーナまで回航する仕事があって、新幹線で門司へ行くより、「はまちどり」に乗って門司へ渡ろうと考えたらしい。

大きなお世話だ、ほっといてくれ、

「助けは不要です、一人で帰ります」と返事。

と、また、電話があって、

「JRの時刻表調べました、これからすぐ発てば、そちらへ１２時前に着きます」と言う。

もう、やって来ることに決めているじゃないか。

「あっそー、それじゃぁ、お願いしましょうか」と返事。

彼は、ボート操船のベテラン。２年前には一緒にトカラへ行った仲だ。来てくれれば、操船が交代できて大いに助かる。

ヨシ○は待つほども無くやってきた。雨の中を艇に駆け込み、

「うわぁーええな、ええな、ボートはええな。波平さぁーん！」と、抱きつきこそせんが、一人興奮し、でかい声ではしゃぎまわる。

その声聴くと、わたしも、一緒にはしゃぎたくなって、別段久しぶりともいえぬ仲ながら、百年来の邂逅を祝うような心地になってきた。

うわぁーうわぁーと言いながら、ヨシ○一升瓶を取り出す。

♂♀＠☆(アルバトロス）さんから波平さんへの差し入れことづかってきた。僕、来る途中でだいぶ飲んでもたけど、アレッ！、まだ、こんなにようけあるやんか！、さぁ、飲みましょう、飲みましょう！と、また、宴会が始まった。

ヨシ○の酒はなかなか手ごわくて一筋縄ではいかんのだ。真似て飲むとえらいことになる。

明日絶対に起きられなくなる。

よわったな、よわったな、と思いつつ、また、深酒。

翌朝のこと、

確か、ヨシ○が、焼酎の一升瓶取り出した時は、まだ８分目ほどは残っていた。だのに、誰が飲んだかもう空っぽである。４合ビンの焼酎も別にあって、これも飲みかけながら半分以上あったはずだが、空っぽになっていた。

朝。ヨシ○の豪快なイビキ。

わたし、飲みすぎのせいか喉が渇いて目が覚めた。

ヨシ○おき出す気配が無い。よっしゃ、もう一度寝よう。そのうち彼も起き出すであろう。まだまだ若いもんには負けんのだ。