故障だぁ〜　　

 

以前、中古の三菱ミニカに乗っていたことがあって、たびたび故障し困った。

クラッチが突然ストンと抜けてしまう故障だった。

エンジンはぶんぶん回るのに、車はへたって動かない。

修理するとしばらくは動くが、頃合をみてまた動かなくなる。

馴れてきて、もうそろそろへたる頃だとわかるから、それなりに愛着がわき愛用したが、JR加古川線の踏み切りのなかでへたって、他社の車に乗り換えた。

 

今はホンダの車に乗っているが、これは、まったく故障知らず。

が、十年を超え、走行距離も１１万キロをだいぶ上回ると、へたりはじめたようである。先日、乗り心地が悪くなったような感じがあって、点検に出すと、詳しくはわからんが後輪車軸のバネ受けピンが１本折れていた。折れ跡がサビていた。

 

点検したホンダ・クリオ店の技術者が、

「ここが折れることは例がありません。よほど強く、以前、何かに当たったことがおありですね」という。

しかり、そのとおり。不注意でバックした際、大きな車止めに激突したことがある。

ショックでタイヤが裂け、新たなのと付け替えた。

が、しかし、その取り替えは、事故顛末を話して、当社の、まさに今点検を受けたこの会社にお願いしたのであった。

ただ、会社は同じでも、ここはそれ以後新たに新築された新鋭の車検専用工場である。技術者もはじめて会う人だ。

わたしは、この過去の経緯を話すことなく、請求代金を支払った。

 

あとで、かみさんに、この過去の事情を話すべきだったと言われたが、あの時は、技術者の眼力に感心し、評価し、

“これ以上、点検が遅れたらあるいは事故にあわれたかもわからん”との説明に、

あぁ〜よかった、助かったと思うばかりで、過去の点検不足を責めることは思いつかなかった。

あれは、わたしの不注意事故であって、メーカー責任による故障ではない。

 

今回、自宅リフォームに際し、幾多の手抜き工事が発覚した。

所定の、厚みの、太さの、資材が使われず、薄く細い資材が使われていた。

釘打つべき箇所に釘が打ってなかったり、ダンボール板が代用されていたりした。

最もあきれた手抜きは、レベル（水平測定）が正確にとれていなかったことだ。

部屋ごとにレベルが違い、部位が変わる都度、段差があった。居間全体が南東側へ傾いており、焼肉鉄板の上のバターは必ず南東側へ滑った。

いつのまにか、馴れてしまっていて不便は感じなかったが、今回正確なレベルのなかに住んでみると、過去のゆがみが今更ながら気になることである。

もう、三十年近くもここに住まっている。地震もあった、でも、崩れずに建っている。まぁよかろうかと思っておる。

 

外部と接触のつど、何か買い物をするつど、期待に反する何かがある。

最近の、その最たるものは、中古艇購入時のものだろう。

業者の提示価格と、わたしの見立て価格との間は、３百万円を超えていた。

が、わたしは、業者に、一度も自分の見立て価格を告げることなく、業者の言い値で契約した。どうしても欲しかったのである。

 

かみさんが言う。

「あのときパパは、あまり嬉しそうな顔をしていなかった」と。

この言葉を幾度聞いたことか。

購入艇は、実に故障が多かった。その都度、自費で修理した。もう新艇購入価格を大幅に越えてしまっているが、この間、ずっと、かみさんの、あの言葉を聞いてきた。

かみさんは重ねて言う。

「だから、いっそのこと、新しいのを買えばよかったのよ」と。

言うはたやすい。だがそんなこと、できるはずもなかった。

 

不満が蓄積し、ストレスがたまり、もう艇をまるごと捨てようかと思ったりした。

その延長線上に、今がある。

そのうち、またぞろ、どこかが故障するのではなかろうかとの思いが、捨てきれない。

故障するつど、営業マン氏の豪腕のことを思う。

してやられたと思ったり、彼も、頑張ったのだと感心したり…、

 

その営業マン氏とは、二十数年来の付き合いである。

中古艇を売るからは、彼は、不測の故障も売るのである。ストレスを抱えながらの営業であろう。頑張っているのがわかる。

わたしは客だ。その分、彼には、業腹なことを平気でぶっつける。彼も見かけは平気である。ひょっとしたら耐えているのかもしれんが。

わたしは、いろいろな場面で彼の意見を取り入れる。

彼のガンバリを買ったような心地がすることがある。