ヒゲ　　

隠居の慰みに、ヒゲの養育（？）てぇのがある。

現役当時は毎朝必ず出勤前にあたっていた髭（ヒゲ）だったが、心に油断が巣くうから、ついつい数日間、ヒゲ剃りを怠るってことになる。

…と、せっかく伸びたヒゲじゃないか、長年剃り捨てていたけれど、可愛そうなことだった、と、心変わりする。

昨日は３月３１日。

一般には年度代わりの日。期末とも言う。

この日、定年退職なさるお方が、ドッサリ居られるってこと。

企業関係では６０歳誕生日をもって、個別にその日とする例が多いようだが、お役所関係は、全員すべて３月３１日。

某自治体職員であったＧ氏が、昨日定年退職された。

わが家へ、隠居仲間入りの挨拶電話があった。

「船長！…」

あぁ〜、わたし、あだ名がいろいろあって、某所では、“船長”と呼ばれます。

「船長！わし、明日から、仲間入りするからヨロシクね！」

で、今日は４月１日。

彼・Ｇ氏は、今朝起き抜けにヒゲを剃るか、剃らないか？

わたし、彼は剃ると思いますよ。

わたしがそうだったから。隠居になったからって、そういきなり完全な隠居になれるわけではない。じょじょになる。

１０日ばかり経ったら、あれ！今日はヒゲ剃るのを忘れておった、ってことになる。すなわち隠居的になってくる。

問題はここからですよ。

ヒゲに３種類あって、アゴヒゲ・口ヒゲ・ホホヒゲ。

隠居の横着が結果的に生み出す顔面のヒゲ。

顔中ヒゲだらけになってみっともないから、いずれは剃るわけだ。

が、しかし、いざ剃る段になると、一気に全部剃るのはもったいないと思う。

ヒゲ剃ったばかりの顔で、カガミに向かって“以後、俺はアゴヒゲに挑戦するぞ！”ってヒゲスタート切るおっさんはおらんだろう。

ヒゲ持ちのおっさんはネ、無精ひげを、単に一部剃り残したなれの果てってこと。

わたしね、だいぶ口ヒゲが、それらしくなりました。ここだけしばらく剃らなかったら、一見立派な口ヒゲになっちゃった。そして、今や、ヒゲ存亡の危機に立っておる。

わたしの口ヒゲは確かに無精ヒゲのなれの果てでした。

が、これ以降は、漫然とこやつを友とすることはできそうにない。

焼酎お湯割りならまだしも、ビールの時は厄介だ。泡がヒゲにからむ。ひと口呑むごとにヒゲをぬぐわねばならん。こんなつもりじゃなかった。

ビールの季節が近い。もう剃らなしゃぁないね。

Ｇ氏、今朝は、ヒゲを剃ったかな？