大丈夫　　

 

長期航海に備え、いろいろ準備に追われているが、はや疲れが出て難儀なことだ。

疲れの主なものは筋肉痛。

 

上架中の艇にキャタツをたてかけ、上ったり下りたりするが、キャタツにガタがきており、ともするとひっくり返りそうになる。

ｂどんが、数度これを上り下りして、

「波平さん、これ危ないでッせ、いずれこけて大ケガしまっせ」という。

わたしも、その予感があるが、この緊張感をもって艇にとりつくのが、航海準備ってものだという気持ちもある。

ひっくり返りそうになりつつ、キャタツを幾度も幾度も上下する。

と、普段は使わぬ筋肉を酷使するようで、身体のあちこちが痛い。

 

手ぶらでキャタツを上下して、それで音を上げているわけじゃない。

艇の整備のため、手になんぞかんぞ荷物を持って上下する。

昨日は、中型クーラーボックスを、左手に持って、残る右手で艇の突起をさぐり掴み、キャタツに勝負を挑んだ。が、途中で耐えかねてクーラーボックスを落としてしまった。割れたかと思ったが割れていない。

 

これはある種成功である。

瞬間の動作判断に、安堵すべきものがあった。

キャタツ上でぐらつき、デングリ返りそうになったから、これはヤバイ、自分がデングリ返る代わりに、クーラーボックスを手放してしまおうと、冷静に判断し、臨機応変、とっさに手放し、結果、事なきを得た。

 

と、今朝、起き抜けに、トイレへ行って、左手人差し指が痛くて動かない。

なんでやろ？

あぁ〜そうだった、昨日、クーラーボックスを手放す際、最後の最後まで、しつこくクーラーボックスを掴んでいたのが、この人差指１本だった。左右の手の、人差し指を並べ観察するに、左手のそれは丸く熱を帯び、腫れている。

 

この左手には各種の障害があって、わが生涯に、苦難の道を強いること久しい。

いつの頃からか中指と薬指が完全に連動し個別には動かない。昨年は、中指の先端を５ミリばかり電動ノコで削った。あれやこれやで、左手の握力は右手の半分以下。それが、今回のことでニギニギするさえ困難である。よォ〜く診ると、左の手のひら全体が腫れている。

 

右手は二の腕の筋が延びている。痛くて力が入りにくい。ケガじゃない、使い痛みである。

しばらく使わずに済ませたいが、そういうわけにもいかない。

だんだんこれがひどくなって、ドライバーでネジクギを打つさえ辛くなった。

この作業をやり終えねばならん、などの義務感が伴うと、どうもいけないようだ。些細なことでも辛く思われ、腕の筋に痛みが走る。

だが、夕刻、焼酎の湯割りをつくるに、一升瓶をネジリ持っても、痛くもなんともない。身体の使い方というか、一升瓶を持つ際のコツとかいったものに、長年の修練が足りていて、こういう場合は大丈夫である。