経済は単純である　　　２１０３２１

 

中古艇を購入して現在更新修理中だ。

先所有者が船腹に書きつけていた旧艇名を削り落とし、磨きをかけると、また嫁入り前の艶やかな肌が戻った。なんだか嫁ぎ先の娘を引き取ったような気がせぬでもない。

明後日、ここに「はまちどり」の艇名を書き入れる予定である。

 

外部船底も相当傷んでおり、要所要所にパテ詰めした後、船底塗料を塗りなおした。

船体内部の修復には各種のパーツが必要だ。取り寄せ中である。

作動不良のＧＰＳプロター魚探は、どう調整を試みても巧く行かず、取り外してメーカーに送った。修復可能か否かはまだ定かでない。

 

操船席の座椅子がガタガタだ。止めネジが外れて無くなっている。

各所にガタがあって、エンジンを掛けると台所の食器棚を揺するような音がする。片端からネジを補強し、タガをはめることになる。

これほどまでに手荒く使われた艇であってこそ、値も下がり、結果購入できるようになったのであるから、決して不満は言うまいと思う。しかし、ひとつひとつ傷はほとんどが不注意によるものであり、その場で初期修復が可能だったはずだ。いたぶられた我が娘が不憫でならぬわけである。

 

下取りに出す現有艇「はまちどり�U」には新艇で購入以来１３年親しんだ。

さすがに各所に疲労破損があって痛々しいことである。船体はＦＲＰ製だが、ＦＲＰも経年劣化はまぬがれぬようだ。思わぬ個所にヒビが入っている。表層だけのヒビだから磨けばとれるが、おっさんとしては、かみさんのシワを見るような心地である。磨き上げようかと思わぬわけでもなかったが、今日のところはめんどうだから缶ビールを飲ませて（ぶっかけて）当面の労をねぎらった。手放すまでにはもうしばらく時間がある。それまでには出来る限り磨きあげるつもりだ。
なお、この際、言うておくが、
使い倒したかみさんを離縁して、他家へ払い出そう魂胆などでは決してない。これもあれも世渡り上の工夫であって、単純なる経済がなすことである。私は畳も女房も古い方が馴染みがあってむしろ好みである。