軍艦マーチ      210413

 

(めい)婿(むこ)が進水式に参加したいと言うので軍艦マーチのテープを1本持ってきてもらいたいと伝えた。

ムコ殿は岡山県立○×高校の体育教師。剣道柔道の達人。立場上、きっと右翼協賛・大日本帝国大好き党でもあろうから、軍艦マーチとは親しいお付き合いがあるだろうと考えた。

結果的に、この思惑に誤りはなかったが、テープ探しはなかなか難儀だったようだ。まず、岡山県内のどの県立高校にも軍艦マーチはなかった。

コリャ大変と、心当たりをたずね回ったらしい。さるところに行き着いて、CDの手配をしたものの、郵便の行き違えで約束の日になってもなかなか届かず、

「おめぇ、一旦約束しながら、グズグズぬかすは無礼じゃろうが…」

と、ドスの利いた脅しをかけるなどして、式当日(4月11日)の朝、ようやくCDを受け取り、岡山の自宅を発つ5分前にテープへのダビングをやり終えるありさまだったとか。おっとり刀の軍艦マーチというわけだ。

 

軍艦マーチが鳴り響くなか、我が「はまちどり」(艇)は、マリーナの大クレーンに吊り下げられて空から海へ舞い降りた。

 

エンジン始動、

ゴウゴウたる音、

軍艦マーチは艇内のステレオ装置を使っていた。エンジン音に負けじとボリュームを上げる。

♪♪ジャン・ジャン・ジャンジャカジャンジャン♪♪

♪♪護るも、攻めるも、(くろがね)の〜♪♪

 

マリーナ職員が総出で祝ってくれるなか、艇は一同を乗せ、静々と桟橋を離れ、沖へ向かった。

春の海。

波もなく薄く霞がかかっていた。

カモメが波間に浮かんでいた。


そういつまでもジャンジャカジャンジャンやってられない。

間もなくステレオは切ったが、

わたしの耳に終日軍艦マーチは鳴り止まなかった。