瀬戸の釣技　そのニ　　　　　２１０７０５

 

クール宅急便に託した三包の“北海道釣果”は、ご近所・親戚縁者の各家庭用冷蔵庫を、それぞれ満杯にしてその姿を消した。

なんと、

一昨日北海道から帰宅して以来、私は釣った魚たちの顔を一度も見ず仕舞いである。

宅急便が着いた途端、かみさんが素早く処分してしまったからだ。

私が見たのは発泡スチロールの空箱だけ。見るからに大きな箱である。この大箱に三杯も釣ったのかと思うと感慨ひとしおだ。

 

義兄宅（かみさんの兄）などは、釣果のおすそ分け用に大きなクーラボックスを新調し、ローソンで氷を仕入れて、受け取りにやって来たらしい。かみさんが、兄宅には５０枚（カレイ）渡したと言うていた。

 

配っても配っても配り尽くせなくて、当然ながら我が家の冷蔵庫も魚々で満杯だ。魚をさばくのに、手に豆ができたようだ。料理して以来二日目の朝になるのに、まだ手が熱を持ってフワフワすると彼女は言う。

 

私が、釣果を見なかったのには訳があって、帰宅早々、私はまた播磨灘へ釣りに出たからである。私が播磨灘に浮かんでいる間に、北海道からの宅急便が届き、たちまち処分されてしまったということである。

ぜんぜん魚を見なかったわけでもない。ちいさいカレイのから揚げを昨夜二枚喰ったが、これが北海道で釣ったに違いないソウハチガレイの顔だ。確かめると「そうですよ」とのことだった。

 

それにしても、かみさんの要領良さには驚いた。

かみさんも、わたしの釣り好きには改めて驚いたらしい。まさか帰宅早々またぞろ釣りに出るとは思わなかったということ。

しかし、私としては、ぜんぜん真っ当な行動であって、必然性に基づく行動である。

オホーツクの海の感触と播磨灘の海のそれとを対比してみたかった。

“播磨灘の海は病んでいる”

私は、播磨灘へ出てみて、そう思わざるを得なかった｡キスとセイゴを少し釣った。