スリッパ

 

盆帰省中の甥や姪を連れて沖へ船釣りに出た。

総勢四人。アジはやはり姿を見せず、主にキスを釣った。数えなかったがバケツ一杯ほどは釣ったろうと思う。甥が大きなマダコを釣って、これが晩のメーン・ディッシュ。キスのてんぷら、キスの刺身が東京人に珍味ぶりを発揮した。

 

小鯛が二尾釣れていて義兄が刺身にさばいた。為に食えず。魚をむやみにキザンだとて、皆が皆サシミになるわけがない。骨やウロコを避け、きれいな身だけをルールに則ってキザムから刺身になる。

 

義兄の刺身造りはキスにも及んだが、キスがつくね芋をすりつぶしたようなダンゴになった。こんなのが食えるはずがない。上述のタコ料理やキスのてんぷら、同刺身は、わたしのかみさんの手料理である。彼女は長年私のもとに住み込み、日々刺身修行にいそしんできたから、今や玄人がハダシいや、スリッパほどの腕前にはなっている。

茹でるとき、茶殻を入れるともっと赤くなる。